「標録(ひょうろく)」とは、主に図書館や情報機関において、所蔵資料の書誌情報を整理・作成し、目録(カタログ)としてデータベースに登録・公開する業務・作業を指す専門用語です。図書や雑誌、論文、電子資料など多種多様な資料について、タイトル、著者、出版者、出版年、分類番号、件名見出しなどを書誌項目(メタデータ)として統一的に記述し、利用者が必要な資料を効率的に検索・貸出できるようにします。

【標録の歴史と発展】 古くは紙のカード目録を一冊ずつ手作業で作成していたため、登録誤りや探しにくさが課題でした。20世紀後半にコンピュータが導入されると、書誌データベース化が進み、オンライン公衆目録(OPAC)が普及。情報の共有や全国の図書館相互貸借(ILL)も可能になり、標録は単なる作業から図書館サービスの中核的機能へと発展しました。

【標録の主なプロセス】 1. 資料受領・確認:新着資料を受け取り、種類や形態を把握 2. 書誌情報作成:書名、著者名、出版情報、ISBN/ISSNなどを正確に入力 3. 分類番号付与:日本十進分類法(NDC)や図書分類法(CLC)などに基づき分類番号を決定 4. 件名見出しの設定:図書館標目(LCSHやNDL本文)を使い、主題を示す見出しを付加 5. 資料形態情報:電子ブック、視聴覚資料、地図資料など、媒体固有の属性を指定 6. データベース登録・公開:OPACや蔵書検索システムに登録し、利用者公開

【標録業務の意義】 ・情報発見性の向上:利用者はキーワード検索、件名検索、分類検索で必要資料を素早く見つけられる ・相互貸借の円滑化:国内外の図書館間で書誌情報を共有し、他館資料の取り寄せが可能に ・統計・分析:貸借データや所蔵構成を分析し、利用動向に応じた蔵書政策を立案 ・保存と長期管理:将来にわたりデジタル書誌情報を保存し、災害時の復旧にも貢献

【主な特徴】 1. 統一規則の適用 ― 書誌データは国際的・国内的な標準(RDA, NDC, MARC21など)に準拠 2. 多様な資料形態対応 ― 紙図書だけでなく電子書籍やデジタルアーカイブも標録可能 3. 自動化支援ツール ― 書誌レコードのインポート/エクスポート機能やマッピング機能を搭載 4. 相互運用性 ― MARC21フォーマットを介して他館システムや外部データベースと連携 5. 品質管理 ― 見出し語の統一、表記揺れチェック、重複レコード検出などによる品質保証 6. 公開インターフェース ― OPAC画面での多彩な検索条件とブラウジング機能

標録は、図書館サービスの基盤を支える重要な業務であり、利用者と資料をつなぐ架け橋です。近年はLinked Data(リンクトデータ)などの取り組みも進み、書誌情報同士をウェブ上で相互参照できるようになりつつあります。今後はAI技術を活用した自動標録や、クラウド型共通基盤への連携など、さらなる効率化・高度化が期待されています。

参考文献・サイト(日本語) 1. 国立国会図書館 「図書館情報学用語集」 https://www.ndl.go.jp/jp/dlib/glossary/index.html 2. 日本図書館協会 編『図書館ハンドブック 改訂第5版』丸善出版, 2018年 3. Wikipedia「カタログ (図書館)」 https://ja.wikipedia.org/wiki/カタログ_(図書館) 4. Weblio辞書「標録の意味」 https://www.weblio.jp/content/標録 5. 国立情報学研究所 CiNii Articles「図書館データベースと標録作業の現状」 https://cir.nii.ac.jp/crid/1130001331761816704 6. 国立国会図書館「MARC21入門」 https://www.ndl.go.jp/jp/service/marc/overview.html

投稿者 wlbhiro

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