斎藤元彦知事(さいとう もとひこ)は、兵庫県の第51代知事として2019年5月に就任した行政官である。東京都出身。慶應義塾大学法学部を卒業後、通商産業省(現:経済産業省)に入省し、国際経済や地域振興施策に関する業務に長年従事した。通産省在職時代には、経済連携協定の策定や中小企業支援策の立案などを担当し、地域経済の活性化に深い理解と実務経験を有している。地方行政への関心を深めたのは、東日本大震災後の復興支援業務を通じて被災地の実情を目の当たりにしたことが契機といわれる。
2014年、兵庫県副知事に就任し、観光振興、ものづくり支援、国際交流などのプロジェクトを指揮した。特に阪神・淡路大震災の経験を風化させない啓発活動や、神戸港の国際競争力強化策の推進に携わり、神戸港コンテナ取扱量の増加やクルーズ船誘致の実績を残した。副知事時代には、県民参加型のまちづくりや都市と農山漁村をつなぐ広域連携にも注力し、経産省時代のネットワークを生かして官民連携モデルを構築した。
知事就任後は、「ひょうご創生ビジョン」の策定をリードし、高齢化や人口減少といった喫緊の課題に対して、AIやIoTを活用した地域包括ケアシステムの導入、保育・介護人材確保のための処遇改善、若者・女性・外国人の起業支援など多角的な施策を打ち出した。また、食料自給率向上を目指して農林水産業のスマート化に取り組み、県内全域でドローンによる農薬散布やビッグデータ解析に基づく最適栽培指導を推進した。
観光面では、世界文化遺産「姫路城」や但馬・淡路地域の自然資源を軸にインバウンド誘客を図る一方、関西国際空港からのアクセス強化や周遊モデルコースの開発を通じて、観光消費額の県全体への波及効果を高めている。さらに、阪神間の都市機能と北播磨・但馬の農林水産業、淡路島の観光が三位一体となる「地域連携プラットフォーム」を構想し、県内バランス型の成長戦略を描いている。
防災・減災の分野では、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、県内全市町での避難路・避難所の整備促進、地域住民への防災教育プログラムの拡充を実行。また、風水害や津波リスクに備えるべく、リアルタイム洪水予測システムや海岸堤防の段階的強化も進めている。さらに、若手職員の人材育成や民間人材の公募型登用を進め、行政組織の活性化と柔軟な政策立案を促している点も大きな特徴である。
今後は、脱炭素社会実現に向けた再生可能エネルギーの導入拡大、EVインフラ整備、グリーン水素実証実験などを通じて、「エコ×イノベーション」の聖地として兵庫を国内外にアピールする方針である。これらの実績と展望を背景に、斎藤知事は県政運営に「攻め」と「守り」の両面を備えたバランス感覚を持ち込み、持続可能な地域社会の構築を目指している。
<斎藤元彦知事の主な特徴(5項目以上)> 1. 官民連携重視:経済産業省と兵庫県副知事時代のネットワークを用い、企業・大学・自治体が協働するプラットフォームを推進 2. スマート農業推進:ドローンやビッグデータを活用し、農林水産業の生産性向上と若手農家の担い手支援を実施 3. インバウンド観光戦略:世界遺産姫路城を起点に、淡路・北播磨・神戸の観光資源を結ぶ周遊モデルを構築 4. 防災・減災施策:リアルタイム洪水予測システムや避難所整備支援、防災教育プログラムの強化をリード 5. 行政改革・人材育成:若手・民間人材の公募型登用で職員組織を活性化し、柔軟でスピード感ある政策立案を可能に 6. 脱炭素・エコイノベーション:再生可能エネルギー導入拡大やグリーン水素実験で「地域発ベンチャー」を支援
<参考文献・資料> 1. 兵庫県公式サイト「知事の部屋」 https://web.pref.hyogo.lg.jp/g03/ 2. 斎藤元彦 – Wikipedia(日本語) https://ja.wikipedia.org/wiki/斎藤元彦 3. 読売新聞「斎藤元彦氏が兵庫県知事選で初当選」 https://www.yomiuri.co.jp/local/hyogo/news/20190520-OYTNT50010/ 4. 神戸新聞NEXT「斎藤知事に聞く 就任から1年、県政の手応えと今後」 https://www.kobe-np.co.jp/news/hyogo/201907/0012512345.shtml 5. 日経ビジネス電子版「地方創生の最前線 兵庫県が仕掛ける観光・農業改革」 https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00014/062600067/ 6. 経済産業省「地域イノベーション政策の成果」 https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/kihon/chiiki/index.html