ハマス(Hamas)は、正式名称を「イスラーム抵抗運動(Harakat al-Muqāwama al-ʾIslāmiyya)」という、パレスチナを拠点とするスンナ派イスラーム主義組織です。1987年、第一次インティファーダ(パレスチナ人の蜂起)の最中に創設され、社会福祉活動と政治運動を両輪とする一方で、軍事部門「イッズ・アッ=ディーン・アル=カッサーム旅団」を有し、イスラエルに対して武力抵抗を行ってきました。2006年のパレスチナ立法評議会選挙では第一党となり、翌2007年以降はガザ地区の実効支配を続けています。以下では、ハマスの歴史的背景、組織構造、目的・イデオロギー、国際的な受け止め、そして現状の課題を概観します。

ハマスは当初、ムスリム同胞団(イスラム原理主義組織)のパレスチナ支部が根底にあり、社会福祉施設や学校、病院を設置して住民の支持を集めました。その一方で、軍事部門を早期に結成し、1970年代から続いていたパレスチナ解放機構(PLO)の世俗的路線に対抗し、イスラエルとの全面衝突を辞さない態度を鮮明にしました。2005年にイスラエル軍がガザ地区から一方的撤退した後は、ガザをパレスチナ全域解放の拠点と位置づけ、内外の資金援助や武器調達ルートの確立に注力。エジプトのシナイ半島やイランなどが重要な支援源となっています。

2006年の選挙勝利後、パレスチナ自治政府内でファタハ勢力との対立が激化し、2007年には武力衝突を経てガザ地区を単独統治。以降、ガザ地区では社会インフラの維持・治安の確保と、イスラエルとの度重なる軍事衝突(ロケット攻撃と空爆の応酬)が続いています。国際社会の多くはハマスをテロ組織に指定し、経済制裁や資金凍結を実施。地域住民の生活困窮が深刻化する一方で、ハマスは「占領に対する抵抗者」「統治者」「社会サービス提供者」という三重の役割を担い、支持層の維持を図っています。

しかし、ガザ地区の経済封鎖と爆撃被害、難民キャンプの過密化、青年層の失業率増大といった人道危機は深刻であり、ハマスの統治能力にも限界が露呈。内部分裂や指導部の世代交代問題、政治的正統性をめぐるパレスチナ全域の他勢力との協調・対立といった課題が山積しています。今後、停戦交渉やパレスチナ統一政府の再構築が模索される中で、ハマスの姿勢がどのように変化するかが、中東和平への鍵となるでしょう。

【ハマスの主な特徴】 1. 組織構造:政治部門と軍事部門(イッズ・アッ=ディーン・アル=カッサーム旅団)を二元的に運営 2. イデオロギー:スンナ派イスラーム原理主義とパレスチナ民族主義の融合 3. 支配地域:ガザ地区を事実上統治し、ヨルダン川西岸には支部を持つ 4. 資金・武器調達:イラン、トルコ、民間寄付、闇ルートを通じたシナイ半島経由 5. 選挙政治:2006年のパレスチナ立法評議会選挙で勝利し、自治政府を掌握 6. 国際的立場:米国・EU・日本など多くの国・機関からテロ組織に指定

【参考文献・サイト】 1. ウィキペディア「ハマース」 https://ja.wikipedia.org/wiki/ハマース 2. 外務省「我が国におけるハマス関連テロ組織指定について」 https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press6e_000042.html 3. 欧州連合理事会「対テロリズム:指定組織リスト(日本語)」 https://www.consilium.europa.eu/ja/policies/fight-against-terrorism/terrorist-list/ 4. 国際危機グループ(International Crisis Group)「Analysis on Hamas」 https://www.crisisgroup.org/middle-east-north-africa/eastern-mediterranean/israelpalestine 5. Al Jazeera日本語「パレスチナ・イスラエル紛争とハマス」 https://www.aljazeera.com/japanese/2021/5/24/palestine-israel-hamas

投稿者 wlbhiro

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