ジー・アイ・エス(GIS:Geographic Information System、地理情報システム)とは、地理空間情報(地図情報)を収集・蓄積・解析・可視化するための総合的な情報システムのことです。GISは主に次の3つの要素から構成されます。 1.データベース機能:位置情報を持つ地物(道路、建物、河川など)を属性情報とともに格納・管理する機能 2.解析機能:空間的・属性的な問いに答えるための統計処理やパターン分析、空間演算を行う機能 3.可視化機能:地図やグラフ、3Dモデルなどで結果を表現し、利用者が直感的に理解できるようにする機能
GISによって、行政・防災・環境・都市計画・交通・農林水産業・マーケティングなど多岐にわたる分野で地理空間的な視点を活用した高度な意思決定支援が可能になります。以下では、GISの特長を具体的に5つ挙げ、各々を説明します。
[GISの主な特長] 1. 空間データの統合管理 ・ベクターデータ(点・線・面)やラスターデータ(航空写真、衛星画像)を一元的に格納し、地理的な関係性を維持したまま管理できる。 2. 多様な空間解析機能 ・バッファ分析、ネットワーク解析(最短ルート探索)、空間統計、ホットスポット分析、3D可視化など、分析目的に応じた多彩な演算モジュールを備える。 3. 視覚的表現による情報共有 ・地図上にシンボルや色分け、ヒートマップを適用し、複雑なデータを直感的に理解・比較できるインタラクティブなマップを作成可能。 4. リアルタイムデータの連携 ・IoT機器やセンサー、ドローン、移動端末から取得した位置情報や気象データをリアルタイムでGISに取り込み、現状把握や異常検知に活用できる。 5. Web・クラウド対応による利便性向上 ・クラウドサービスやWebアプリケーションを通じて、場所や端末を問わずGIS機能を共有・共同利用できる。大規模ユーザによる同時編集や大容量データの配信が可能。
GISはもともと、20世紀後半に地図作成とコンピュータデータベース技術の融合から発展し、1980年代以降に商用パッケージソフトが登場したことで急速に普及しました。近年ではオープンソースのGISソフトウェアも充実し、専門家だけでなく一般企業や自治体、教育現場でも手軽に導入・利用できるようになっています。
具体例としては、都市計画における土地利用シミュレーション、防災分野における洪水浸水シミュレーションや避難経路の最適化、農業分野における作物生育予測と施肥計画、物流分野における配送ルートの効率化など、導入事例は枚挙に暇がありません。また、スマートシティ構想や自動運転技術の発展に伴い、GISはこれまで以上に重要な基盤技術として期待されています。
GIS導入のポイントとしては、まずは解決したい課題を明確化し、必要な空間データの種類と解析手法を設計することが重要です。次に、組織内のデータ管理体制や業務フローを整備し、運用ルールを定めます。最後に、GISを扱う人材育成や教育研修を行い、システムを継続的に改善・拡張できる体制を構築することが成功の鍵となります。
[主な参考文献・ウェブサイト] 1. 国土交通省 国土地理院「地理情報システム(GIS)とは」 https://www.gsi.go.jp/GIS/ 2. ESRIジャパン「ArcGISとは~GISの基本~」 https://www.esrij.com/arcgis/what-is-gis/ 3. オープンソースGISプロジェクト「QGIS 日本ユーザー会」 https://www.qgis.jp/ 4. 内閣府「防災GISプラットフォーム」 https://www.bousai.go.jp/kohou/kouhoubousai/h29/290810/05.pdf 5. 農林水産省「農業GIS活用ガイド」 http://www.maff.go.jp/j/keikaku/kankyo/saigai/pdf/gis_handbook.pdf 6. 環境省「環境GIS(環境アセスメント支援システム)」 https://www.env.go.jp/policy/assess/earth/gis.html