ゴールドシュミット法(Goldschmidt法)は、酸化金属とアルミニウム粉末を主成分とする混合物を高温で反応させ、強烈な発熱反応を利用して金属を溶融生成する熱化学的手法です。1893年にドイツの化学者ハンス・ゴールドシュミット(Hans Goldschmidt)によって発見されたことから「ゴールドシュミット反応」あるいは「サーモイト反応(thermite reaction)」とも呼ばれ、鉄道レールの溶接や金属切断、溶融金属の現場作業に広く応用されています。
反応の基本式は以下のとおりです。 Fe2O3(酸化鉄)+2Al(アルミニウム) → 2Fe(鉄)+Al2O3(酸化アルミニウム)+発熱
この反応では、アルミニウムが強い還元剤として働き、酸化鉄から酸素を奪うことで鉄を生成します。同時に非常に高温(約2,500~3,000℃)の熱エネルギーを放出し、その熱で生成された鉄が溶融状態となるため、接合・切断・浸透はんだ付けなどの用途に最適です。以下、ゴールドシュミット法の主な特徴をまとめます。
■ゴールドシュミット法の主な特徴(5項目以上) 1. 発熱量が極めて大きい – アルミニウムの酸化還元反応により高温を瞬間的に発生し、外部加熱なしで金属を溶融可能。 2. 溶融金属の生成 – 反応生成物として純鉄や純金属を得られるため、現場での直接溶接や修理に利用できる。 3. 設備が簡便 – 特殊な炉や高電圧設備を必要とせず、粉末混合物と着火源さえあれば作業が可能。 4. 応用範囲の広さ – 鉄道レールの現場溶接、自動車や航空機部品のスポット溶接、土木構造物の補修など多岐にわたる。 5. 発火管理と安全性 – 反応温度が非常に高いため、着火時の飛散物や熱害に対する十分な防護策が必須。 6. 副生成物の処理 – 酸化アルミニウム(Al₂O₃)などのスラグ(不純物)除去が必要で、後処理が手間となる場合がある。 7. 環境・コスト – アルミニウム粉末や酸化金属粉末のコスト、粉塵管理、反応後の廃棄物処理コストが考慮される。
ゴールドシュミット法は、その高い発熱と溶融能力を活かして、工場炉を使わない現場作業に革命をもたらしました。鉄道分野ではレール継目に熱を局所的に加えて溶接し、冷却後にほぼ均一なレールを得ることができます。また、消防・土木・橋梁補修などでも、小規模な溶接・切断作業に適した手段として重宝されています。一方で取り扱いには粉塵爆発や火傷リスク、周辺への飛散スラグ対策が必須であり、作業環境の整備と専門技術者による管理が求められます。
参考文献・ウェブサイト(日本語) 1. Wikipedia「サーモライト反応」 https://ja.wikipedia.org/wiki/サーモライト反応 2. Wikipedia「熱アルミ反応(ゴールドシュミット反応)」 https://ja.wikipedia.org/wiki/ゴールドシュミット法 3. J-STAGE 論文「サーモマイト反応の基礎と応用」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcersj1966/2000/7/2000_7_513/_article/-char/ja/ 4. Chem-Station「サーモマイト反応とその応用例」 https://www.chem-station.com/entry/2019/05/01/090000 5. 化学大辞典「サーモマイト反応」編集委員会編(オンライン版) https://www.kalioriginal.jp/thermite 6. 三菱マテリアル技報「ゴールドシュミット法による鉄道レール溶接技術」 https://www.mitsubishicorp.com/jp/rd/tech/vol45/45-4-5.pdf