パーキンソン病とは、主に中高年者に発症する進行性の神経変性疾患であり、ドパミンを産生する黒質(中脳の一部)神経細胞が徐々に減少することによって引き起こされます。ドパミンは運動の調節や精神活動に重要な役割を果たす神経伝達物質であるため、その欠乏が運動症状や非運動症状をもたらします。以下では、500字以上でパーキンソン病の概要、原因、症状、診断、治療、予後などについて述べます。
パーキンソン病の発症原因は完全には解明されていませんが、遺伝的素因と環境因子の相互作用が深く関与すると考えられています。家族歴を認めるケースはごく一部ですが、αシヌクレインやLRRK2など特定の遺伝子異常がリスクを高めることが報告されています。また、農薬や重金属への曝露、生活習慣なども発症に影響するとされます。
主な運動症状には「振戦(ふるえ)」「固縮(こわばり)」「無動(動きにくい状態)」「姿勢反射障害(転びやすい)」の四大徴候が知られ、症状は通常片側の上肢から始まり、進行とともに両側に広がります。一方で、非運動症状としては便秘、嗅覚低下、睡眠障害、うつ症状、認知機能低下、自律神経症状(発汗異常、起立性低血圧)などが現れ、患者のQOL(生活の質)に大きな影響を及ぼします。
診断は主に臨床的に行われ、特徴的な運動症状の評価に加え、薬物(レボドパ)に対する反応性を確認することで診断精度を高めます。脳画像(MRIやDAT-SPECTなど)は他疾患との鑑別に有用ですが、病理学的確定診断は剖検による黒質の神経細胞減少やレビー小体(αシヌクレイン凝集体)の存在を確認することでなされます。
治療の中心はドパミン補充療法であり、レボドパ製剤やドパミンアゴニスト、MAO-B阻害薬などを適宜組み合わせて症状コントロールを図ります。また、長期投与に伴う運動合併症(ジスキネジアやウェアリングオフ)への対策も重要です。理学療法や作業療法、言語療法などリハビリテーションを併用することで日常生活動作の維持・改善を目指します。進行例では脳深部刺激療法(DBS)や持続皮下輸注療法など外科的・特殊薬物療法が適応となることもあります。
予後は個人差が大きいものの、適切な薬物療法とリハビリテーションの組み合わせで長期にわたり自立した生活を維持できるケースも多く、早期診断・早期介入が重要です。しかし、認知症や精神症状、自律神経障害が進行すると生活の質が低下しやすいため、総合的なケア体制が求められます。
特徴(主な症状・所見) ・振戦:安静時に手指や手首が規則的に震える。 ・固縮:筋肉のこわばりにより関節の可動域が制限される。 ・無動・寡動:動作開始が遅れる、表情が乏しくなる。 ・姿勢反射障害:重心を保つ反射が低下し、転倒しやすくなる。 ・非運動症状:便秘、嗅覚障害、睡眠障害、うつ症状、自律神経症状など。 ・薬物反応性:レボドパ投与により運動症状が改善する。 ・進行性:年単位で徐々に症状が進行し、治療やケアの調整が必要となる。
参考文献・情報源 1) MSDマニュアル プロフェッショナル版「パーキンソン病」 https://www.msdmanuals.com/ja/professional/neurologic-disorders/movement-disorders/parkinson-disease 2) 日本神経学会「パーキンソン病診療ガイドライン 2021」 https://www.neurology-jp.org/guidelinem/PDGL2021.pdf 3) 国立精神・神経医療研究センター病院「パーキンソン病診療の手引き」 https://www.ncnp.go.jp/hospital/page/parkinson/ 4) 厚生労働省 難治性疾患克服研究事業「パーキンソン病(難病情報センター)」 https://www.nanbyou.or.jp/entry/485 5) 日本パーキンソン病友の会「ホームページ」 http://www.parkinson.gr.jp/ 6) パーキンソン病財団(英語)“Parkinson’s Disease Overview” https://www.pdf.org/parkinsons_overview
