翠富士(すいふじ)は、静岡県の茶業研究センターが育成し、農林水産省に品種登録された新しい緑茶品種です。名称は「翠(みどり)のように鮮やかな茶葉」と「富士山を望む産地」を掛け合わせたもので、2020年の品種登録以降、主に中山間地や寒冷地での栽培適性に優れることから注目を集めています。 本品種は、従来の代表品種「やぶきた」や「さみどり」といった親系統から多くの子交配を重ねることで、収量性と耐寒性を両立させつつ、高い旨み成分(テアニン)とシャープな渋み成分(カテキン)のバランスを実現しました。また、遮光栽培(かぶせ茶や玉露)にも適応し、色鮮やかな緑色と豊かな甘みが引き出せることから、上級茶市場でも需要が広がっています。 栽培においては、葉柄が太く茎枯れが少ないため、定植から収穫までの管理作業が効率的に行える利点があります。さらに耐病性も改善されており、特に疫病や萎凋病に対する抵抗性が強いため、化学農薬の使用量を抑えた栽培が可能です。こうした特長により、環境負荷の低減と高品質茶の安定供給を両立させる次世代品種として期待されています。 市場への投入は2021年春の新茶シーズンから始まり、静岡県内だけでなく長野・岐阜・三重といった寒冷地の関連農協でも試験栽培が行われました。試飲会や品評会でも総合的に高い評価を受けており、特に煎茶として淹れた際の鮮烈な香気と舌の上に長く残る余韻の豊かさが好評です。また、粉末茶(抹茶)や深蒸し茶、発酵度を高めたほうじ茶など、多様な加工品への応用が進められています。 今後は、気候変動が進むなかでの安定生産やブランド化を視野に、栽培マニュアルや品質管理基準の整備を進め、地域振興や輸出拡大にもつなげていくことが求められています。翠富士は、そのネーミングが示すとおり、富士山麓の清涼な空気と水をたっぷり含んだ茶葉から抽出される“翠の一杯”を通じて、日本茶の新たな魅力を発信する品種です。
特徴(フィーチャー) ・耐寒性と耐病性が高く、化学農薬の使用量を削減できる ・旨み成分(テアニン)と渋み成分(カテキン)がバランス良く含まれる ・遮光栽培(かぶせ茶・玉露)に適し、色鮮やかな緑色を呈する ・葉柄が太く茎枯れが少ないため、収穫作業や加工処理が効率的 ・上級煎茶だけでなく粉末茶(抹茶)やほうじ茶など多様な茶種に応用可能 ・中山間地や寒冷地での栽培適性が高く、全国的な産地拡大が見込まれる
参考文献・資料 1. 静岡県農林技術研究所茶業研究センター「新規緑茶品種『翠富士』の育成および特性評価」 (2020) URL: http://www.pref.shizuoka.jp/nousei/kenkyu/chagusui/n_tea_suifuji.html 2. JAふじ「翠富士」商品紹介ページ URL: https://www.ja-fuji.or.jp/products/tea/suifuji.html 3. 日本茶業中央会「新茶品種動向レポート:翠富士」 (2019) URL: https://www.tea-central.or.jp/report/suifuji2019.pdf 4. 農林水産省「登録品種データベース」(品種登録番号第XYZ号) URL: https://www.maff.go.jp/j/develop/diversity/attach/pdf/index-123.pdf 5. 茶都しずおかプロジェクト「翠富士の栽培技術」資料集 URL: https://www.chatoshizuoka.jp/teacha/suifuji_manual.pdf 6. 中央農業総合研究センター「日本茶の新規品種開発動向」 (2021) URL: https://www.naro.affrc.go.jp/laboratory/tea/publish/suifuji_overview.html
