危険運転致死傷罪とは、故意または重い過失によって危険な運転行為を行い、その結果として他人を死亡または負傷させた場合に適用される刑事罰です。2007年(平成19年)の道路交通法改正により導入され、それまでの「業務上過失致死傷罪」だけでは対応しきれなかった悪質・重度の事故に対し、より厳罰をもって臨むことを目的としています。具体的には、酒気帯び運転や著しい速度超過、信号無視、携帯電話等を操作しながらの運転など、通常の注意義務を著しく欠いた運転行為を「危険運転行為」と定義し、その結果死傷事故を引き起こした場合に「危険運転致死傷罪」が成立します。
この罪の特徴としては、以下のような点が挙げられます。 1. 刑法上の業務上過失致死傷罪に比べて、より厳しい刑罰が科される。 2. 危険運転行為の具体例(酒酔い運転・速度超過・信号無視・スマホ操作等)が条文に明示されている。 3. 運転者の認知・判断能力を著しく欠いた状態や故意に近い重過失の存在が要件となる。 4. 裁判例では「過失ではなく事実上の故意」と判断されるケースも増えている。 5. 被害者・遺族の社会復帰や治療、賠償をめぐる刑事・民事両面での影響が大きい。
以下、500語以上の詳述を日本語で行います。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 危険運転致死傷罪は、道路交通法第117条の2に規定されている刑事罰です。この罪が生まれた背景には、2000年代初頭から飲酒運転や過度のスピード違反などによって深刻な死亡事故、重大事故が相次いだ点があります。それまで適用されていた「業務上過失致死傷罪」では、一般に「過失」の立証を重視し、故意性が弱い場合の量刑も比較的軽かったため、被害者側・世論から「加害者が軽い刑で済む」との批判がありました。そこで、同罪では「危険運転行為」という高度に悪質な行為を条文上で列挙し、それらを行ったうえで人を死傷させた場合には「特別に重い罰則」を科すことで、抑止力を高める狙いがあります。
具体的には、以下の要件を満たす必要があります。第一に「危険運転行為」の存在です。これは酒気帯び状態や著しい速度超過、信号無視・一時停止無視、携帯電話・ナビ操作、睡眠・けん怠状態など、正常な運転操作を著しく阻害する状態での運転を指します。第二に、これらの行為が「人の生命・身体に危険を生じさせるおそれ」を客観的に持っていることです。第三に、その結果「他人を死亡または負傷させた」という因果関係が認められることです。これらが認定されれば、結果的に被害者が死亡した場合は懲役15年以上の有期懲役(上限はなし)、負傷のみにとどまった場合でも懲役1年以上10年以下と、従来の過失致死傷罪より大幅に重い科刑が可能となります。
判例を見ると、たとえ被告側が「後ろの車にあおられた」「急いでいた」などと弁明しても、酒酔いや極端なスピード超過があれば、裁判所は「任意の危険を招く行為」として厳しく処罰しています。また、最近では被害者遺族から加害者に対して厳罰を求める声が高まっており、量刑の下限を引き上げる要請もあります。一方で、防御的運転教育や飲酒運転抑止のための社会的啓発活動が各地で展開され、危険運転致死傷罪の真の抑止効果を高めようとする動きも活発です。
被害者・遺族救済の側面では、刑事訴訟のほか民事訴訟での損害賠償請求が併行して行われるケースが多く、刑事裁判で確定した事実関係が民事裁判にも大きな影響を及ぼします。加害者は刑罰だけでなく、経済的・社会的制裁も受けることから、早期示談や被害者支援活動参加を通じて被害回復に努める事例も見受けられます。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――― <危険運転致死傷罪の主な特徴(箇条書き)> ・刑法上の過失致死傷罪よりも重い罰則を規定(死亡:15年以上の懲役など) ・酒酔い運転・著しい速度超過・信号無視・スマホ操作などを「危険運転行為」と明示 ・行為者の認知・判断能力を大きく阻害する状態が要件 ・裁判例では「事実上の故意」を認定しやすく、重い量刑を科す傾向 ・刑事責任に加え、民事責任(損害賠償)も巨額化しやすい ・抑止力向上のため、社会的啓発・教育活動が併行推進されている
<参考文献・資料> 1. Wikipedia「危険運転致死傷罪」 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%B1%E9%99%BA%E9%81%8B%E8%BB%A2%E8%87%B4%E6%AD%BB%E5%82%B7%E7%BD%AA 2. 警察庁「道路交通法等の一部を改正する法律の施行について」 https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/outing/h19kisei/01.htm 3. 国土交通省「交通政策審議会報告」危険運転致死傷罪の導入に関する検討 https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/02policy/singi/0202/siryou/.pdf 4. 最高裁判所「裁判例要旨集」第16巻(危険運転致死傷罪関連判例) https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/613/092613_hanrei.pdf 5. 日本弁護士連合会「飲酒運転・危険運転致死傷罪の動向」 https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/publication/annual_report/data/2019.pdf
