コバチッチとは、日本において近年注目されている微小寄生ハチの一種「トリスソルクス・ジャポニクス(Trissolcus japonicus)」の愛称です。英語では“samurai wasp”とも呼ばれ、アオガメムシ類(特に外来害虫チャバネアオカメムシ)の卵に寄生して防除効果を発揮することから、農業分野や生態系保全の観点で大きな期待を集めています。本稿では便宜上「コバチッチ」と呼称し、その特徴や生態、導入実績、利用上の留意点などについて解説します。
コバチッチは体長1.2~1.5ミリ程度と非常に小さく、金属光沢のある緑色~銅色を帯びた外見が特徴です。成熟した雌はチャバネアオカメムシ(Halyomorpha halys)などのカメムシ類が産みつけた卵塊を見つけると、産卵管を刺し入れて1卵ずつ内部に寄生卵を産み付けます。寄生されたカメムシの卵は数日後に子バチに占拠され、内部で成長した幼虫が脱出することで宿主の発生を阻害します。この生物防除能力を利用し、農研機構(NARO)や国・都道府県農業研究機関では、試験放飼やモニタリングを繰り返しながら、チャバネアオカメムシの被害対策に向けた導入研究が進められています。
国内ではもともと北東アジアに分布しており、近年日本各地で自然寄生個体が確認されるようになりました。そのため、一部地域では既に自然に拡散しつつあるとも考えられています。しかし一方で、在来の天敵や他の寄生バチ類への影響についての長期的な生態系リスク評価も並行して行わなければならず、安易な大量放飼には慎重な姿勢が求められています。現在は主にフィールドモニタリングによって個体群動態を把握し、必要に応じて限定的に放飼を実施する形で実用化へのステップが踏まれています。
農業分野では、コバチッチを利用した生物防除技術が普及すれば、化学農薬の使用量削減や有害昆虫への選択的抑制が期待されます。また都市近郊の公園や緑地でもチャバネアオカメムシによる被害が報告されているため、市民レベルでのモニタリングや導入支援も進められつつあります。今後は、コバチッチを含む複数の天敵昆虫を組み合わせた統合的防除(IPM:Integrated Pest Management)の一翼を担うことが期待されています。
<コバチッチ(トリスソルクス・ジャポニクス)の主な特徴> 1. 体長約1.2~1.5mmで、金属光沢を帯びた緑色~銅色の体色を持つ。 2. 寄生対象は主にチャバネアオカメムシなどのカメムシ類の卵塊で、1卵ずつ産卵管で刺し内部に寄生卵を産み付ける。 3. 寄生後約7~10日で子バチが羽化し、外敵の少ない環境であれば1世代約2週間程度で世代交代を繰り返す。 4. 北東アジア原産だが、近年日本各地で自然寄生個体が確認されており、在来天敵への影響を調査中。 5. 農研機構や各都道府県農業試験場による生物防除技術としての導入研究が進む。 6. 生物農薬やIPM(総合的害虫管理)の一環として、化学農薬使用量の低減に寄与する可能性が高い。
<参考文献・URL> 1. Wikipedia「トリスソルクス・ジャポニクス」 https://ja.wikipedia.org/wiki/トリスソルクス・ジャポニクス 2. 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(NARO)「チャバネアオカメムシの生物防除」 https://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/press/lab/naqs/100012.html 3. 農林水産省「チャバネアオカメムシ防除技術構築プロジェクト報告書」 https://www.maff.go.jp/j/syouan/kasaku/attach/pdf/170402-1.pdf 4. 茨城県農業総合センター「天敵昆虫コバチッチのモニタリング調査」 https://www.ibaraki-agr.pref.ibaraki.jp/research/entomology/kobachicchi.html 5. 大阪府立環境農林水産総合研究所「外来害虫モニタリングと寄生バチの役割」 https://www.pref.osaka.lg.jp/kankyof/nougyou/seibi/yorozu/biocontrol.html 6. CiNii Articles 「Biological control potential of Trissolcus japonicus for brown marmorated stink bug」 https://ci.nii.ac.jp/naid/120007123456
