# ICCとは

ICCとは、一般に **International Criminal Court(国際刑事裁判所)** の略称であり、国家ではなく、個人を対象として、国際社会で最も重大な犯罪を裁く常設の国際裁判所です。日本語では「国際刑事裁判所」と呼ばれます。ICCは、オランダのハーグに本部を置いています。ICCを設立する根拠となった条約は「ローマ規程」と呼ばれ、1998年に採択され、2002年7月1日に発効しました。

ICCが扱う主な犯罪は、集団殺害犯罪、すなわちジェノサイド、人道に対する犯罪、戦争犯罪、侵略犯罪の四種類です。ジェノサイドとは、民族、国民、宗教などの集団を全部または一部破壊する意図をもって、殺害や重大な身体的・精神的危害などを行う犯罪です。人道に対する犯罪とは、一般の住民に対して、殺人、奴隷化、追放、拷問、性的暴力、迫害などを大規模または組織的に行う行為を指します。戦争犯罪とは、武力紛争に適用される国際人道法に違反する行為であり、捕虜や民間人の殺害、拷問、民間施設への不法な攻撃などが含まれます。侵略犯罪とは、国家の政治的または軍事的指導者が、他国に対して明白に違法な武力行使を計画、準備、開始、または実行する犯罪です。

ICCの重要な特徴は、「補完性の原則」を採用していることです。これは、まず各国の国内裁判所が事件を捜査し、必要に応じて裁判を行うことを基本とし、国内の司法制度が本当に捜査や裁判を行えない場合、または行う意思がない場合に限って、ICCが介入するという考え方です。そのため、ICCは各国の裁判所を常に置き換える機関ではありません。国内裁判所が誠実かつ適切に手続きを実施している場合、同じ事件をICCが改めて扱うことは原則として認められません。

ICCは国家そのものを裁く裁判所でもありません。ICCが刑事責任を問う対象は、国家の政策決定者、軍の司令官、武装組織の指導者などの「個人」です。ただし、犯罪が組織的に実行された場合には、上級指導者の命令、指示、援助、黙認、または部下を適切に管理しなかった責任が問題となる場合があります。裁判で有罪が確定した場合には、拘禁刑、一定の条件の下での賠償、被害者への補償などが命じられることがあります。

ICCが事件を扱うためには、一定の管轄権が必要です。原則として、犯罪が締約国の領域で行われた場合、犯罪を行った人物が締約国の国籍を持つ場合、非締約国が管轄権を受け入れた場合、または国連安全保障理事会が事態をICCに付託した場合などに、ICCの管轄権が成立する可能性があります。国連安全保障理事会による付託は、容疑者の国籍や犯罪地の国がローマ規程の締約国でない場合にも、事件をICCの対象にする可能性があります。

もっとも、ICCには自ら逮捕する警察組織がありません。ICCが発行した逮捕状を実際に執行するためには、締約国などの各国当局による協力が必要です。この点は、ICCの活動における大きな制約の一つです。また、すべての国がローマ規程に加盟しているわけではないため、ICCの管轄権が及ぶ範囲にも限界があります。さらに、捜査や裁判には長い時間と多額の費用が必要となり、証人の安全確保、証拠収集、政治的圧力、被害者の保護なども重要な課題となります。

ICCと国際司法裁判所(ICJ)は、名前が似ていますが、役割が異なります。ICCは個人の刑事責任を裁く機関です。一方、ICJは主として国家間の紛争を扱い、国家が国際法上の義務に違反したかどうかを判断する機関です。この違いを理解することは、国際裁判所に関する報道を正確に理解するうえで重要です。

日本はローマ規程を批准し、2007年からICCの締約国となっています。そのため、日本はICCの活動を財政面および制度面で支援しています。また、日本人の裁判官や職員がICCの活動に関わってきた実績もあります。ICCは、重大な国際犯罪について責任を問えない状態を減らし、被害者の権利を尊重し、将来の犯罪を抑止することを目指しています。しかし、ICCだけで世界中の紛争や人権侵害を解決できるわけではなく、各国の司法制度、国際協力、外交努力、被害者支援と組み合わせて機能する制度です。

なお、「ICC」という略称は、文脈によって別の意味を持つ場合があります。たとえば、国際商業会議所(International Chamber of Commerce)、ICCプロファイルを扱う色管理分野、メモリーカード規格を策定する団体などもICCと略されます。国際法や戦争犯罪のニュースで使われる「ICC」は通常、国際刑事裁判所を意味します。

## ICCの主な特徴

1. ICCは、国際刑事裁判所を意味する略称です。 2. ICCは、国家ではなく個人の刑事責任を審理します。 3. ICCは、ジェノサイド、人道に対する犯罪、戦争犯罪、侵略犯罪を扱います。 4. ICCは、オランダのハーグに本部を置いています。 5. ICCは、ローマ規程を根拠として設立されています。 6. ICCは、国内裁判所を優先する補完性の原則を採用しています。 7. ICCには独自の警察組織がないため、逮捕や証拠収集で各国の協力を必要とします。 8. ICCは、被害者の参加や賠償など、被害者の権利を重視しています。 9. ICCとICJは異なる機関であり、ICCは個人を、ICJは主として国家間の紛争を扱います。 10. 日本は2007年からICCのローマ規程の締約国になっています。

## 参考文献・参考URL

1. 国際刑事裁判所(ICC)公式ウェブサイト https://www.icc-cpi.int/

2. 国際刑事裁判所「ローマ規程」 https://www.icc-cpi.int/sites/default/files/Publications/Rome-Statute.pdf

3. 外務省「国際刑事裁判所(ICC)」 https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/icc/

4. 国際連合「International Criminal Court」 https://www.un.org/ruleoflaw/thematic-areas/international-law-courts-tribunals/icc/

5. 国際刑事裁判所「About the Court」 https://www.icc-cpi.int/about-the-court

6. 国際司法裁判所(ICJ)公式ウェブサイト https://www.icj-cij.org/

7. 赤十字国際委員会「国際刑事裁判所と国際人道法」 https://www.icrc.org/en/what-we-do/international-criminal-justice

投稿者 wlbhiro

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