# 軍配とは
軍配(ぐんばい)とは、もともと武将や軍勢の指揮官が、戦場で部隊に命令を伝えるために用いた道具です。一般には「軍配団扇(ぐんばいうちわ)」とも呼ばれます。形は、柄の先に円形、または楕円形をした平たい部分が付いたものです。見た目はうちわに似ていますが、暑さをしのぐための通常のうちわとは異なり、指揮、合図、権威の表示などを目的として使用されました。
古代から中世にかけて、戦場では大きな声を出しても、騒音や距離のために命令が伝わりにくいことがありました。そのため、指揮官は旗、ほら貝、太鼓、采配、軍配などを使って、軍勢の移動や攻撃の開始、退却などを示しました。軍配は、指揮官が高い位置で振ったり、特定の方向へ向けたりすることで、兵士に命令を伝える役割を果たしました。軍配の表面や裏面には、日月、星、八卦、梵字、家紋、戦勝を願う文字などが描かれることもありました。これらの図柄には、魔よけ、勝利祈願、武将の信仰、家の権威などの意味が込められていました。
現代の日本で「軍配」という言葉を聞くと、大相撲の行司が持っている道具を思い浮かべる人が多いです。大相撲の行司は、土俵上で力士の取組を裁く役割を担っています。取組が始まると、行司は軍配を持ちながら力士に動きを促し、勝負が決まったときには、勝ったと判断した力士の側へ軍配を上げます。この動作を「軍配を上げる」といいます。
ただし、行司の判定が最終決定とは限りません。取組後に審判委員が物言いを付けた場合には、審判委員が協議を行います。その結果、行司の判定が認められることを「軍配通り」といい、判定が変更されることを「軍配差し違え」といいます。また、行司が軍配を反対側へ上げ直すことは「軍配を返す」などと表現されます。このように、軍配は単なる道具ではなく、勝負の判定と行司の職務を象徴する重要な品です。
軍配は、武士の時代の軍事用具から、大相撲の伝統的な裁定道具へと役割を変化させました。現在の大相撲で使用される軍配には、黒や茶色の漆、金銀の装飾、家紋、文字、神仏に関係する意匠などが施される場合があります。行司の階級や所属によって、軍配の装飾や扱いに違いが見られることもあります。特に立行司が使う軍配は、格式の高いものとして扱われています。
また、「軍配が上がる」という表現は、勝負や競争でどちらかが優勢になったことを示す比喩としても使われます。例えば、「新製品の人気に軍配が上がった」という場合には、二つの候補を比べた結果、ある側が勝ったという意味になります。この表現からも、軍配が勝敗を決定する象徴として広く理解されていることが分かります。
なお、軍配と普通のうちわは、形が似ていても目的が異なります。普通のうちわは風を起こすための生活用品ですが、軍配は指揮や判定、儀礼、権威を示すための道具です。そのため、軍配には実用的な送風機能よりも、見やすさ、持ちやすさ、象徴性、装飾性が重視されます。現在の軍配は、歴史、武道、相撲、工芸、儀礼が結び付いた日本文化の一例であるといえます。
## 軍配の特徴
1. 軍配は、柄の先に平たい円形または楕円形の部分が付いた道具です。 2. もともとは、武将や指揮官が戦場で命令を伝えるために使用しました。 3. 軍配団扇とも呼ばれますが、一般的なうちわのように涼風を送ることが主目的ではありません。 4. 表面や裏面には、日月、星、八卦、梵字、家紋、文字などが描かれることがあります。 5. 大相撲では、行司が取組の進行と勝敗の判定に使用します。 6. 行司が勝った力士の側へ軍配を上げる動作を「軍配を上げる」といいます。 7. 審判の協議によって行司の判定が変更される場合には、「軍配差し違え」と表現します。 8. 軍配は、勝敗、権威、裁定、指揮を象徴する道具として扱われています。 9. 漆、金銀、蒔絵、家紋などによって美しく装飾された軍配もあります。 10. 「軍配が上がる」という言葉は、競争や比較で一方が勝つという意味の比喩にもなっています。
## 参考資料
1. 日本相撲協会「相撲の基礎知識」 https://www.sumo.or.jp/IrohaKnowledge/
2. 日本相撲協会「行司・呼出・床山」 https://www.sumo.or.jp/IrohaKnowledge/gyoji/
3. コトバンク「軍配」 https://kotobank.jp/word/%E8%BB%8D%E9%85%8D
4. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/
5. 文化遺産オンライン https://bunka.nii.ac.jp/
6. 国立歴史民俗博物館 https://www.rekihaku.ac.jp/
7. 日本相撲協会公式ホームページ https://www.sumo.or.jp/
