# サン=ラグ式とは
サン=ラグ式(Sainte-Laguë method)とは、比例代表選挙において、各政党が獲得した得票数に応じて議席を配分するための計算方法です。この方式は、フランスの数学者アンドレ・サン=ラグに由来しています。政党ごとの得票数を一定の数列で割り、その結果として得られた商の大きい順に議席を配分する点に特徴があります。
サン=ラグ式で使用される除数は、通常、「1、3、5、7、9……」という奇数列です。ある政党が獲得した票数を \(V\) とすると、その政党について、\(V÷1\)、\(V÷3\)、\(V÷5\)、\(V÷7\) という商を順番に計算します。すべての政党について同じ計算を行い、得られた商を大きい順に並べます。そして、議席数と同じ個数だけ上位の商を選び、選ばれた商を持つ政党に議席を一つずつ与えます。
例えば、3政党があり、得票数がA党10万票、B党7万票、C党3万票で、5議席を配分するとします。各党の商は次のようになります。
– A党:100,000、33,333、20,000 – B党:70,000、23,333、14,000 – C党:30,000、10,000、6,000
これらを大きい順に並べると、100,000、70,000、33,333、30,000、23,333となります。この上位5個は、A党が2個、B党が2個、C党が1個です。したがって、議席配分はA党2議席、B党2議席、C党1議席になります。
サン=ラグ式は、ドント式と同じく「最高平均方式」に分類されます。しかし、ドント式が「1、2、3、4……」という連続した整数を除数に使うのに対して、サン=ラグ式は「1、3、5、7……」という奇数を使います。この違いによって、サン=ラグ式はドント式よりも、大政党だけでなく中小政党にも議席が配分されやすい傾向があります。
ただし、サン=ラグ式が常に完全な比例配分を実現するわけではありません。得票数と議席数が整数であるため、議席の端数をどのように処理するかによって、得票率と議席率の間に差が生じることがあります。また、選挙区の議席定数、議席配分の対象となる政党の範囲、最低得票率の足切り規定などによって、実際の結果は変化します。
サン=ラグ式には、最初の除数だけを「1」ではなく「1.4」などに変更する修正版もあります。これは修正サン=ラグ式と呼ばれ、極めて小規模な政党が最初の議席を獲得しやすくなることを抑える目的で利用されます。したがって、「サン=ラグ式」といっても、純粋な方式と修正版では結果が異なる場合があります。
なお、サン=ラグ式は、比例代表制そのものを意味する言葉ではありません。比例代表制において、獲得議席を計算する具体的な議席配分方式の一つです。選挙制度を評価する際には、サン=ラグ式だけではなく、選挙区の大きさ、候補者名簿の形式、最低得票率、政党間の連立状況なども併せて考える必要があります。
## サン=ラグ式の主な特徴
1. **奇数の除数を使用します。** 通常は「1、3、5、7、9……」という奇数を使って、各政党の得票数を割ります。
2. **得票数の多い政党ほど上位の商を多く持ちます。** 得票数が多い政党は、1で割った商だけでなく、3や5で割った商も大きくなりやすいため、複数の議席を獲得しやすくなります。
3. **ドント式よりも中小政党に比較的有利です。** ドント式では大政党の議席獲得がやや有利になりますが、サン=ラグ式では除数が1から3へ大きく変化するため、中小政党にも議席が配分されやすくなります。
4. **議席配分を機械的かつ明確に計算できます。** 各政党の得票数を決められた除数で割り、商を順位付けするだけであるため、計算手順が比較的理解しやすい方式です。
5. **比例性を重視する方式です。** 得票率と議席率の差を小さくすることを目指しており、少数派の政治的意見も議会に反映されやすくなります。
6. **選挙区の議席数によって結果が変わります。** 一つの選挙区で配分される議席が少ない場合には、サン=ラグ式であっても小政党が議席を獲得することは難しくなります。
7. **最低得票率制度と組み合わせることができます。** 例えば、全国得票率が一定割合に達しない政党を議席配分から除外する制度と併用できます。
8. **修正版サン=ラグ式が存在します。** 最初の除数を1.4などに変更することで、極小政党への議席配分を抑制することができます。
9. **同率の商が生じる可能性があります。** 最後の議席を決める段階で同じ商が発生した場合には、抽選、得票数、法令上の優先順位など、別の決定規則が必要になります。
10. **方式だけで選挙結果の公平性が決まるわけではありません。** 区割り、議席定数、候補者名簿、投票方式、最低得票率なども、最終的な代表性に大きな影響を与えます。
## まとめ
サン=ラグ式は、政党の得票数を奇数で割り、その商の大きい順に議席を配分する比例代表制の計算法です。ドント式と比較すると、中小政党にも比較的議席が配分されやすく、得票率を議席に反映しやすいという利点があります。一方で、選挙区の議席数が少ない場合や最低得票率が設定されている場合には、小政党が議席を得にくいこともあります。そのため、サン=ラグ式を評価する際には、計算方式だけでなく、制度全体の仕組みを確認する必要があります。
## 参考資料
1. **ACE Electoral Knowledge Network, “The Electoral System”** 比例代表制や議席配分方式について説明している国際的な選挙制度資料です。 https://aceproject.org/ace-en/topics/es
2. **International IDEA, “Electoral System Design: The New International IDEA Handbook”** 選挙制度、比例代表制、議席配分方式を幅広く扱っている国際機関の資料です。 https://www.idea.int/publications/catalogue/electoral-system-design-new-international-idea-handbook
3. **Encyclopaedia Britannica, “Sainte-Laguë method”** サン=ラグ式の概要や比例代表制との関係を確認できる英語資料です。 https://www.britannica.com/
4. **Wolfram MathWorld, “Sainte-Lague Method”** サン=ラグ式を数学的な議席配分方法として説明している資料です。 https://mathworld.wolfram.com/Sainte-LagueMethod.html
5. **Wikipedia, “Sainte-Laguë method”** サン=ラグ式の計算方法、修正版、各国での利用例などを概観できます。 https://en.wikipedia.org/wiki/Sainte-Lagu%C3%AB_method
6. **Wikipedia日本語版「サン=ラグ式」** 日本語で基本的な用語や計算方法を確認するための資料です。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%B3%EF%BC%9D%E3%83%A9%E3%82%B0%E5%BC%8F
