帯状疱疹ワクチン(たいじょうほうしんワクチン)は、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV: Varicella-Zoster Virus)が再活性化して発症する帯状疱疹(ヘルペス・ゾスター)の予防を目的としたワクチンです。主に50歳以上の成人に対して接種が推奨されており、高齢者ほど帯状疱疹およびその後遺症である帯状疱疹後神経痛のリスクが高まることから、予防接種によって発症率や重症度を低減させる効果が期待されています。
帯状疱疹ワクチンには大きく分けて二つのタイプがあります。一つは「生ワクチン」(弱毒化生ワクチン)で、既に日本でも以前から承認・使用されている「Zostavax(ゾスタバックス)」です。もう一つは「サブユニットワクチン」(不活化ワクチン)で、抗原成分とアジュバント(免疫増強剤)を組み合わせた「Shingrix(シングリックス)」です。
生ワクチンは弱毒化された全ウイルスを含み、体内で軽度に増殖して免疫を誘導します。一方、サブユニットワクチンはウイルスの糖蛋白質(gE)を精製し、アジュバントを添加することで強い免疫応答を引き出します。臨床試験では、サブユニットワクチンは生ワクチンに比べて高い有効性(約90%以上)を示し、ワクチン接種後の免疫効果の持続期間も長いことが報告されています。
接種対象年齢や回数はワクチンの種類によって異なり、生ワクチンは1回接種、サブユニットワクチンは通常2回接種(初回+2~6か月後に2回目)です。接種できる年齢は生ワクチンが50歳以上、サブユニットワクチンが50歳以上(国によっては18歳以上でも承認)となっています。日本国内では2020年にShingrixが承認され、生ワクチンよりも副反応はやや強いものの、より高い予防効果が得られるとして広く推奨されています。
副反応としては、局所の疼痛・腫脹・発赤、全身の発熱・倦怠感・頭痛などが挙げられ、特にサブユニットワクチンでは接種後数日間、38℃程度の発熱や倦怠感が見られることがあります。しかしこれらは一般に一過性で、重篤な副反応はまれとされています。
帯状疱疹ワクチンの接種によって、帯状疱疹の発症リスクが大幅に低減し、発症した場合でも症状の重症化や帯状疱疹後神経痛の発生率が抑えられます。50歳以上の成人を中心に、かかりつけ医やワクチン外来での相談を経て接種を検討することが望まれます。
以下に主な特徴をまとめます。
[主な特徴] 1. 目的:帯状疱疹および帯状疱疹後神経痛の予防 2. ワクチン種類:弱毒化生ワクチン(Zostavax)とサブユニットワクチン(Shingrix) 3. 接種対象:原則50歳以上、免疫不全者は医師と要相談 4. 接種回数:Zostavaxは1回、Shingrixは2回(初回+2~6か月後) 5. 有効性:Zostavax約50~70%、Shingrix約90%以上(発症予防効果) 6. 持続期間:Zostavaxは数年間で低下、Shingrixは5年以上高い効果維持 7. 副反応:局所疼痛・腫脹・発赤、全身性発熱・倦怠感・頭痛など(一般に軽~中等度) 8. 注意事項:急性疾患時は接種延期、免疫抑制中の患者は使用注意または禁忌
[参考文献・ウェブサイト] 1. 厚生労働省「定期予防接種・任意予防接種の概要」 URL: https://www.mhlw.go.jp/topics/bcg/ 2. 日本ワクチン学会「帯状疱疹ワクチン」 URL: https://www.jscar.jp/vaccine/shingles/ 3. MSD株式会社「Shingrix(シングリックス)製品情報」 URL: https://www.msd.co.jp/product/shingrix/ 4. GSK ジャパン「Zostavax(ゾスタバックス)製品情報」 URL: https://www.medinfo.co.jp/gsk/zostavax/ 5. CDC(米国疾病予防管理センター)「Shingles Vaccination」 URL: https://www.cdc.gov/vaccines/vpd/shingles/index.html