厚生年金とは、日本の公的年金制度の一種で、民間企業や公務員以外の会社員が加入する「厚生年金保険」に基づいて給付を行う年金制度です。国民年金が第1号被保険者(自営業者や学生など)に対する基礎年金を提供するのに対し、厚生年金は第2号被保険者(会社員や公務員)向けに国民年金を上乗せする仕組みとなっており、公的年金の中核的役割を担っています。
厚生年金の歴史は戦後まもない1944年(昭和19年)に前身となる「厚生年金保険法」が制定されたことに始まります。その後何度か制度改正を経て、1961年に国民年金制度が創設され、厚生年金は基礎年金部分と報酬比例部分とに体系化されました。1994年には受給開始年齢が段階的に引き上げられ、さらに2004年の年金制度改革では積立方式と賦課方式のハイブリッド型へと移行するなど、財政の安定化と給付水準の見直しが行われています。
厚生年金の大きな特徴は、老齢年金、障害年金、遺族年金の三大給付をカバーしていることです。老齢年金は定年退職後の生活を支える基盤となり、保険料納付期間や報酬などに応じて給付額が決定されます。障害年金は業務外の病気やケガで障害状態となった場合に支給され、遺族年金は被保険者が死亡した際に残された家族の生活を支援します。これらの給付は国民年金だけでは賄いきれない部分を補完する役割を果たしています。
また、厚生年金保険料は事業主と被保険者がほぼ折半して負担します。報酬月額と賞与額に保険料率を乗じて算定されるため、収入に応じた公平な負担原則が採用されています。一方、給付算定も加入期間と報酬額を基礎に計算される「報酬比例部分」があり、長く高い報酬で働くほど年金額が増える仕組みです。これにより、会社勤めの中高年層により適した社会保障を提供できるようになっています。
近年では少子高齢化の進行に伴い、厚生年金制度の持続可能性が大きな課題となっています。支える現役世代の人口が減少し、受給者が増加しているため、保険料率の上昇や給付水準の見直し、受給開始年齢の引き上げなどの検討が続いています。国としては、働き方改革や高齢者の就労促進、外国人労働者の受け入れ拡大などにより、年金制度を安定化させる取り組みを進めています。
総じて、厚生年金は日本のサラリーマンや公務員など多くの働く人々にとって老後・障害・遺族に対するセーフティネットとして不可欠な制度であり、その安定的な運営は社会保障全体の基盤を支える重要な要素となっています。
<厚生年金の主な特徴> 1. 給付の三本柱:老齢年金、障害年金、遺族年金をカバーする。 2. 報酬比例部分:加入期間と報酬額に応じて給付額が算出される。 3. 保険料の折半負担:事業主と被保険者がほぼ同額を負担する。 4. 基礎年金との重畳構造:国民年金の基礎部分に上乗せする形で給付される。 5. 階層的保険料率:報酬月額や賞与額ごとに保険料が設定される。 6. 受給開始年齢:原則65歳(段階的に引き上げ中)。 7. 制度改革の継続性:少子高齢化に対応するため都度見直しが行われている。
<参考文献> 1. 日本年金機構「厚生年金保険とは」 https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/kyufu/kokkens/service-02.html 2. 厚生労働省「年金制度のあらまし」 https://www.mhlw.go.jp/content/000627242.pdf 3. 日本年金機構『公的年金年間報告書』 https://www.nenkin.go.jp/about/shimosho/kaigisho/nenkin/nenkinsiryoushu/youran.html 4. Wikipedia「厚生年金保険」 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8E%9A%E7%94%9F%E5%B9%B4%E9%87%91%E4%BF%9D%E9%99%BA 5. 日本経済新聞「少子高齢化と年金制度の課題」 https://www.nikkei.com/article/DGXKZO63750420T00C20A9EA4000/ 6. 社会保障制度研究所『最新年金制度と企業経営』 https://www.sskri.co.jp/publication/pension2021.pdf