帯状疱疹(たいじょうほうしん)は、ヒトの水痘・帯状疱疹ウイルス(varicella‐zoster virus; VZV)が再活性化して引き起こされる皮膚疾患であり、通常は体の片側に帯状に分布する疼痛と水疱性発疹を特徴とします。初感染で水痘(水ぼうそう)を発症した後、ウイルスは感覚神経節に潜伏し、その後の加齢やストレス、免疫力低下などを契機に神経節で再活性化して皮膚に沿った神経支配領域に症状を生じます。
発症初期には、ピリピリ・ズキズキといった痛みや灼熱感が現れ、やがて赤い斑状の発疹と小水疱が形成されます。痛みは発疹出現前から感じることが多く、皮膚症状が明らかになった後も摘まむような激しい痛みが数週間から数か月にわたって持続するケースもあります。とくに高齢者やがん化学療法中、免疫抑制薬投与中の患者では病変が広範かつ重症化しやすく、肺炎や脳炎などの合併症を引き起こすリスクが高まります。
診断は臨床的所見を中心に行われ、痛みの部位と一致する帯状の発疹および水疱の分布、神経痛の存在などが決め手となります。必要に応じてウイルスDNAのPCR検査や血清学的検査を追加して確定診断を行うことがあります。治療は抗ウイルス薬(アシクロビル、バラシクロビルなど)の早期投与が基本で、48~72時間以内の開始が推奨されます。抗ウイルス薬に加えて、鎮痛薬や神経障害性疼痛治療薬(ガバペンチン、プレガバリンなど)による疼痛管理も重要です。
帯状疱疹の予防には、水痘ワクチン接種歴の確認と帯状疱疹ワクチンの適切な利用が有効です。特に50歳以上の成人を対象としたワクチン接種は発症リスクおよび重症化リスクを低減させることが示されています。発疹や痛みが長引く「帯状疱疹後神経痛」は患者のQOL(生活の質)を大きく低下させるため、発症早期からの適切な治療介入が不可欠です。
<帯状疱疹の主な特徴(特徴を5つ以上列挙)> ・ヒトの水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の再活性化による疾患 ・感覚神経支配領域に沿った片側性の帯状発疹 ・発疹前後の強い神経痛(針で刺すような痛み、焼けるような痛み) ・水疱形成後の結痂と色素沈着残存 ・高齢者や免疫抑制状態での重症化・合併症リスク上昇 ・早期治療で症状軽減、遅延すると帯状疱疹後神経痛を生じやすい ・帯状疱疹ワクチンによる発症予防効果が確認
<参考文献・リンク(日本語)> 1. 国立感染症研究所 感染症情報センター「帯状疱疹(Herpes Zoster)」 https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ha/shingles.html 2. MSDマニュアル家庭版「帯状疱疹」 https://www.msdmanuals.com/ja/home/皮膚科疾患/ウイルス性疾患/帯状疱疹 3. 日本皮膚科学会「Q&A 帯状疱疹」 https://www.dermatol.or.jp/qa/qa45/ 4. 厚生労働省「水痘・帯状疱疹ワクチンに関する情報」 https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000595602.pdf 5. 日本医師会 e-ヘルスネット「帯状疱疹とは」 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/disease/skin/zk-033.html 6. 日本小児科学会「水痘・帯状疱疹ウイルス感染症ガイドライン」 https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/2020/01/vzv_gl2020.pdf