箱根(はこね)は、神奈川県西部に位置する火山地帯を中心とした観光地であり、古くから箱根山(外輪山と中心火山)の豊かな自然と温泉文化に支えられてきました。東京都心から約80キロメートルの距離にあり、新宿や横浜から小田急ロマンスカーなどの直通列車で約1時間半ほど、または東京駅から新幹線とバスを乗り継いでアクセスできるため、国内外の観光客に広く親しまれています。
箱根は総面積約92平方キロメートルの広大なエリアにわたり、標高約1,438メートルの神山(かみやま)を筆頭に、約30の山々と大小の湖沼が点在しています。特に芦ノ湖(あしのこ)は、標高723メートルに位置するカルデラ湖で、遊覧船や海賊船クルーズから見る富士山の眺望が代表的な観光スポットです。また、湖畔には箱根神社が鎮座し、縁結びや家内安全を願う参拝客が絶えません。
大涌谷(おおわくだに)は約3,000年前の噴火で形成された火口跡で、現在も活発な噴気活動が続いています。地熱によって噴き出す蒸気が立ちのぼる荒涼とした景観は、まさに大自然の力を感じさせ、名物の「黒たまご」は硫黄泉でゆでられることで殻が真っ黒になり、食べると寿命が七年延びるという伝説と共に人気を集めています。
箱根はまた、温泉地としても極めて有名で、湯本温泉、塔ノ沢温泉、強羅温泉、宮ノ下温泉など約20ヶ所以上の温泉地が点在し、それぞれに泉質や泉温、湯量、歴史背景が異なります。古くは江戸時代の参詣者や文人墨客が湯治や避暑を目的に訪れ、川端康成や与謝野晶子らも箱根の自然美を愛しました。
文化・芸術面では、彫刻の森美術館やポーラ美術館、箱根ガラスの森美術館など個性的なミュージアムが数多く立地し、屋外と屋内を問わず多彩なアート作品が楽しめます。特に彫刻の森美術館は日本初の野外彫刻公園として知られ、ピカソ館やシャガール壁画も所蔵しています。さらに、箱根登山鉄道やケーブルカー、ロープウェイという変化に富んだ交通手段を組み合わせることで、観光客は山麓から山頂、大涌谷、芦ノ湖へとスムーズに移動しながら、多様な景観を楽しむことができます。
四季折々の自然景観も魅力で、春の桜や新緑、夏の深い緑と涼風、秋の紅葉、冬の雪景色と温泉の湯煙が織り成す風情は、訪れるたびに異なる表情を見せます。特に秋の紅葉シーズンは箱根湯本から強羅、芦ノ湖周辺まで山全体が赤や黄に染まり、夜にはライトアップも行われるため、ライトアップ紅葉と温泉の組み合わせが人気を博しています。
また、近年では「箱根ジオパーク」として、その地質学的な価値が認められ、火山活動によって形成された地形や噴気地帯、大涌谷などは地球科学の学習フィールドとしても注目されています。山と湖、温泉と美術館、自然と文化が高次元で融合した箱根は、江戸時代から現代に至るまで変わらぬ魅力を放ち続けています。
<主な特徴> ・火山活動が生む大涌谷の噴気地帯と黒たまご伝説 ・芦ノ湖遊覧船・海賊船から望む雄大な富士山の眺望 ・湯本、塔ノ沢、強羅、宮ノ下など20以上の温泉地 ・彫刻の森美術館、ポーラ美術館、ガラスの森美術館など個性豊かな美術館群 ・箱根登山鉄道・ケーブルカー・ロープウェイによる変化に富んだ交通体験 ・四季折々の自然美(桜、新緑、紅葉、雪景色) ・ジオパーク認定による地質学的価値と学習フィールドとしての魅力
<参考文献・URL> 1. 箱根町公式観光サイト「箱根ナビ」 https://www.hakonenavi.jp/ 2. 箱根ジオパーク推進協議会 https://www.hakone-geopark.jp/ 3. 箱根温泉観光協会 https://www.hakone.or.jp/ 4. 彫刻の森美術館〈公式〉 https://www.hakone-oam.or.jp/ 5. 日本政府観光局(JNTO)「Discover Hakone」 https://www.japan.travel/ja/spot/98/