悪石島(あくせきじま)は、鹿児島県大島郡十島村に属する有人島で、トカラ列島を構成する島の一つです。島名の「悪石」は、溶岩流や火山活動によって生じた黒っぽい玄武岩の転石が多く見られることに由来するとされます。面積は約7.58平方キロメートルで、人口は約160人(2020年国勢調査)ほどの小さな島ですが、独自の文化や自然環境、火山活動の痕跡などが多彩に残る点で注目されています。

地理的には奄美大島から南西へ約100キロメートルの位置にあり、ほぼ南北に細長い楕円形を呈しています。島の中央には標高約584メートルの悪石岳がそびえ、ここから流れ出した溶岩が島の地形を形成しました。島の周囲は切り立った断崖が多く、浜辺は小さな砂浜や岩礁帯が点在します。海岸線ではダイビングやスキューバダイビングが盛んで、サンゴ礁や熱帯魚、ウミガメを観察できるスポットが知られています。

気候は亜熱帯海洋性気候に属し、年間を通して温暖多湿です。台風の直撃を受けることもありますが、冬季でも平均気温はおおむね10℃以上を保ち、寒さが厳しくなることはほとんどありません。島内に温泉はありませんが、近隣の温泉利用施設へ船でアクセスすることも可能です。

住民は主に漁業と農業を営んでおり、キビ(さとうきび)やパパイヤ、バナナなどの熱帯果樹の栽培が行われています。また、島独自の民俗芸能として「トカラ唄」や「三味線」が伝承されており、祭りや集会では今も島唄が響き渡ります。島外との定期船は週に2~3便程度運航しており、鹿児島本土や口之島、平島など他の離島との連携が維持されています。

島内には電気・水道・通信網が整備されており、携帯電話の利用も可能です。しかし、医療施設は診療所が1軒あるのみで、重大な病気やけがの場合は定期船やヘリコプターで鹿児島県内の病院へ搬送されることがあります。教育機関としては小中学校が併設されており、高校進学の場合は島外への通学が一般的です。

自然環境保全の観点から、トカラ列島はユネスコ「世界ジオパーク」や長期的な自然観察地としての登録を目指しており、悪石島もその候補地の一つに数えられています。火山学的にも貴重な溶岩台地や火山灰層の記録が残り、専門家による観測・調査が定期的に行われています。観光客はまだ少数ですが、秘境的な島旅を求める人々やダイバー、アウトドア愛好家にとっては隠れた魅力が詰まった島と言えるでしょう。

【悪石島の主な特徴(項目別)】 1. 火山地形:悪石岳を中心とした玄武岩質の溶岩台地と断崖絶壁 2. 生物多様性:サンゴ礁や熱帯魚、ウミガメなどの海洋生物観察スポット 3. 民俗文化:トカラ唄や三味線などの島唄伝承と年中行事 4. 交通・インフラ:週2~3便の定期船、島内電気・水道・通信完備 5. 農漁業:さとうきび、パパイヤ、バナナ栽培と漁業による地域産業 6. 気候:亜熱帯海洋性気候で冬でも温暖、台風の影響を受けやすい 7. 自然保全・研究:ユネスコ世界ジオパーク候補地、火山学・生態学調査

【参考文献・ウェブサイト】 1. Wikipedia「悪石島」 https://ja.wikipedia.org/wiki/悪石島 2. 鹿児島県大島支庁トカラ列島紹介ページ http://www.pref.kagoshima.jp/ae04/kokusai/tokara/tokara-akuseki.html 3. 十島村公式サイト「トカラ列島の島々」 https://www.toshimamura.org/tokara-islands/akusekijima/ 4. Amami Tourism Guide「悪石島の観光情報」 https://www.amami-tourism.org/akusekijima 5. 日本火山学会「トカラ列島の火山活動」 https://www.geomorph-soc.jp/publications/journal/vulcanology/tokara 6. 環境省「ユネスコ世界ジオパーク国内候補地」 https://www.env.go.jp/earth/unesco/geopark/domestic_candidates.html

投稿者 wlbhiro

コメントを残す