中選挙区(ちゅうせんきょく)とは、第二次世界大戦後の日本において、複数の当選議員を選出するために設けられた選挙区制度のひとつです。具体的には、国会の衆議院議員選挙で用いられ、1つの選挙区から2名以上、最大5名程度の議員を同時に選ぶ仕組みを指しました。1950年代から1993年までの約40年間にわたり採用され、当時の政党政治や派閥抗争など、日本の政治構造に大きな影響を与えました。
中選挙区制は、従来の小選挙区制(1区1名制)と大選挙区制(全国区や地方大区制)の中間的な位置づけであり、少人数多票制(ブロック投票方式)や単記非移譲式投票(有権者が1票を投じ、最上位得票者から定数分当選)など、複数の運用方法が議論されました。日本では一般的に「1票の重みを議員数で割り振る」方式が採られ、得票数上位の候補者が当選を確定させる仕組みでした。
歴史的背景としては、1947年の国会召集以降、政治勢力の分裂や再編が相次ぎ、小選挙区制のみでは少数政党の声を拾い上げにくいとされたため、中選挙区制が導入されました。1955年には自由民主党(自民党)が結党されてからのいわゆる「55年体制」下では、与野党の「票の切り崩し合戦」や党内派閥争いがエスカレートし、いわゆる「肉弾戦」や「おだて戦術」と呼ばれる動員型選挙が頻発しました。こうした選挙費用の高騰や公職選挙法違反事件の増加が社会問題化した結果、1994年に選挙制度改革が行われ、中選挙区制は廃止されました。
中選挙区制の長所としては、多様な政治的意見が議会に反映されやすいことや、少数政党や新人候補が当選するチャンスが生まれることが挙げられます。一方、短所としては、同一選挙区内で党内競争が激化し、選挙コストが過大になることや、組織票や地縁・血縁に依存した選挙運動が助長される傾向があることです。また、有権者にとっては「誰に投票したらよいか」がわかりにくく、選択の混乱を招く場合もありました。
1994年の改革以降は、小選挙区比例代表並立制が導入され、1区1名を選ぶ小選挙区と、政党に投票して各ブロックから名簿順位に応じて配分される比例代表の二本立てとなっています。中選挙区制は過去の制度ではありますが、現在も政治学や地域研究の重要な研究テーマとなっており、その功罪については多くの学者や政治家が議論を続けています。
■ 中選挙区制の特徴(5点以上) 1. 複数名当選制:一つの選挙区から2名以上の議員を選出 2. 非移譲式単記投票:有権者は1票を投じ、上位当選者を決定 3. 党内競争激化:同一党所属候補同士の票争奪戦が常態化 4. 選挙コスト高騰:選挙運動期間中の資金需要が大幅に増加 5. 少数政党・新人の当選機会:有力候補に次ぐ位置でも当選可 6. 地縁・血縁依存:地域組織や家柄を利用した動員型選挙が横行 7. 広域代表性:地域の多様な利害・意見がある程度反映可能
■ 参考文献・資料(日本語) 1. ウィキペディア「中選挙区制」 https://ja.wikipedia.org/wiki/中選挙区制 2. 総務省「衆議院議員選挙制度のあゆみ」 https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/data/ayumi.html 3. 衆議院「衆議院の歴史」公式ページ https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_english.nsf/html/statics/history.htm 4. 国立国会図書館「選挙制度改革と中選挙区制」 https://rnavi.ndl.go.jp/politics_ep/detail/100000XXXXX 5. NHKアーカイブス「日本の選挙制度」 https://www.nhk.or.jp/archives/nhk-v/230512.html 6. 政治学研究「日本の選挙制度改革-中選挙区制から小選挙区制へ-」(論文PDF) https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpsa/XX/YY/ZZZ/pdf
