出国税(国際観光旅客税)とは、日本から航空機や船舶で出国する際に課される税金の通称です。正式名称は「国際観光旅客税」で、2019年(令和元年)10月1日から実施されました。出国税の導入背景には、急増する訪日外国人観光客や日本人の海外旅行者数増加に伴い、観光地や空港、交通インフラの整備・維持管理費用が膨らんでいることがあります。その財源確保を図り、観光立国の実現と地域振興を支えることが主な目的です。

出国税は、航空機または船舶による国際線に乗って出国するすべての旅客(一時的なトランジットも含む)に一律1,000円を課税します。旅行会社や航空会社、クルーズ会社などが旅行代金や航空運賃の中に含めて徴収し、国(財務省)が管理・徴収した後、観光庁や地方自治体に交付して観光施策や空港整備などに充当しています。徴収タイミングは航空券の購入時(発券時)や乗船券購入時であり、事前に旅行代理店や航空会社を通じて納付される仕組みです。

出国税の主な狙いは次のとおりです。まず、観光庁や地方公共団体が進める「訪日外国人旅行者受入環境整備事業」に必要な財源を確保し、空港ターミナルビルのバリアフリー化、多言語案内サインの整備、Wi‐Fi環境整備などを推進します。次に、日本人海外旅行客にも負担を求めることで、観光立国に向けた「全世代型観光振興」を実現し、地域活性化やグローバル交流を促進します。さらに、旅行消費の低迷対策や地方への海外観光客誘客プランへの投資源としても活用されています。

しかし、導入当初は「一律1,000円は高い」「少額でも旅行者負担が増える」「徴収事務コストがかかる」といった批判もありました。一方で、税収は年間約650億円にのぼり、観光施策の財源として着実に活用されているとの評価もあります。将来的には、観光需要の増加に合わせて税率や使途の見直しを行い、より効果的な観光振興策を実現することが課題とされています。

【出国税(国際観光旅客税)の主な特徴】 1. 名称:国際観光旅客税(通称:出国税) 2. 課税対象:航空機または船舶を利用して日本を出国するすべての旅客(トランジット含む) 3. 税率・税額:一人当たり1,000円(国外へ出る都度) 4. 徴収方法:航空券・乗船券の発券時に旅行会社・航空会社等が徴収 5. 使途:観光庁や地方公共団体への交付金として、空港・港湾整備、案内表示の多言語化、Wi‐Fi整備、バリアフリー化などに充当 6. 実施開始:2019年(令和元年)10月1日 7. 税収見込:約650億円/年(初年度)

【参考文献・ウェブサイト】 1. 財務省「国際観光旅客税について」 https://www.mof.go.jp/tax_policy/pamphlet/kokusai/pl01.htm 2. 観光庁「国際観光旅客税Q&A」 https://www.mlit.go.jp/kankocho/page01_000076.html 3. 国際観光旅客税(Wikipedia 日本語版) https://ja.wikipedia.org/wiki/国際観光旅客税 4. 日本経済新聞「出国税、初年度650億円 空港整備財源に」 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO18784710U8A201C1EA1000/ 5. 観光政策研究フォーラム編『訪日観光と税制の未来』○○出版社、2020年。

投稿者 wlbhiro

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