発達障害とは、神経発達の過程において脳機能や認知機能の偏りや障害が生じ、社会生活や学習・行動面において持続的な困難をもたらす一群の障害を指します。具体的には、注意欠如・多動性障害(ADHD)、自閉スペクトラム症(ASD)、学習障害(LD)、チック障害、言語・コミュニケーション障害などが含まれます。これらの障害は生涯にわたって継続することが多く、早期発見と適切な支援が、その後の社会適応やQOL(生活の質)の向上にとって非常に重要です。
発達障害の診断は主に医師や臨床心理士、言語聴覚士などの専門家が行い、DSM-5(アメリカ精神医学会の診断基準)やICD-11(WHOの国際疾病分類)などを参考にします。診断基準では、生活や学習面で機能障害が見られること、発達期(通常は18歳まで)に症状が現れていること、他の疾患や障害によるものではないことなどが確認されます。ただし、発達障害は個人差が大きく、同じ診断名でも症状の現れ方や重症度は多様です。
支援の方法としては、環境調整、行動療法、ソーシャルスキルトレーニング、言語治療、薬物療法などが挙げられます。例えば、ADHDでは注意力や衝動のコントロールを助けるための薬物療法や行動療法が効果的とされています。ASDでは、コミュニケーション能力や対人関係スキル向上のための構造化されたプログラムやソーシャルスキルトレーニングが推奨されます。また、学校や職場では個別指導計画(IEP)や合理的配慮を行い、その人の特性に応じた学習環境や就労支援を提供することが重要です。
発達障害の早期発見は、家庭や教育現場での観察がきっかけとなることが多いです。例えば、言葉の発達が遅い、こだわり行動が強い、指示を聞いても注意が続かない、他者とのコミュニケーションが苦手などが見られた場合、早めに専門医への相談を検討します。適切な支援を受けることにより、症状の緩和や問題行動の軽減だけでなく、自尊感情の向上や社会参加の促進にもつながります。
なお、発達障害は本人の努力不足や性格の問題ではなく、脳の発達特性によるものであり、偏見や誤解をなくして、その人らしさを尊重しながら支援していくことが求められます。社会的な理解を深め、多様な個性が共生できる環境づくりが今後ますます重要になるでしょう。
<発達障害の主な特徴(例)> ・注意の持続や切り替えが苦手で、集中力の低下や多動・衝動性が見られる ・対人関係やコミュニケーションに独特の困難があり、非言語的サインの理解が難しい ・学習場面で読み書き・計算など特定の能力のみが著しく遅れる・苦手がある ・こだわり行動や儀式的な行動が強く、変化に対する抵抗感や不安が大きい ・感覚過敏・感覚鈍麻など感覚処理の偏りがあり、特定の音・光・触覚などに過剰反応または無反応 ・ストレスや環境変化に弱く、情緒面での不安定さやパニックを起こしやすい
参考文献・ウェブサイト(日本語) 1. 厚生労働省「発達障害総合サイト」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000182035.html 2. 日本発達障害ネットワーク(JDNet) https://jdnet.gr.jp/ 3. 発達障害情報・支援センター https://www.nan.co.jp/center/ 4. 公益社団法人 日本自閉症協会 https://www-autism.jp/ 5. WHO「国際疾病分類(ICD-11)」 https://icd.who.int/ja 6. アメリカ精神医学会 DSM-5 日本語版情報 https://www.psychiatry.jp/education/dsm/
