バングラデシュは南アジアに位置する国で、インドとミャンマーに挟まれたベンガル湾に面しています。かつては東パキスタンと呼ばれていましたが、1971年の独立戦争を経てパキスタンから分離し、正式にバングラデシュ人民共和国として成立しました。国土の大部分はガンジス川やブラマプトラ川の三角州(デルタ)地帯で占められており、肥沃な平野が広がる一方、毎年の洪水やサイクロンなどの自然災害に脆弱な地域でもあります。人口は1億7000万人を超え、世界で8番目に多い国となっています。首都はダッカ(Dhaka)で、急速に都市化が進む一方、貧困やインフラ不足、環境汚染といった課題を抱えています。
歴史的には、大航海時代からムガール帝国、イギリス植民地時代を経て、1947年のインド・パキスタン分離独立によって東パキスタンの一部となりました。しかし、言語や文化、経済的格差を巡る対立が深まり、1971年の独立戦争で大きな犠牲を払いつつ新国家を樹立しました。以来、軍事政権から民主主義への移行や政権交代が繰り返され、現在は多党制の議会制民主主義を採用しています。政党間の対立や選挙時の混乱も少なくありませんが、経済成長率は近年6~8%を維持し、繊維工業や輸出製品の拡大によって顕著な発展を遂げています。
バングラデシュ経済の柱は縫製・繊維産業であり、世界第二位の衣料品輸出国として知られています。また、海産物や農産物の生産も盛んで、米や魚介類は国民の主食です。一方で電力不足やインフラ整備の遅れ、都市部の交通渋滞、人口密度の高さに起因する住宅不足などの課題が依然として残っています。さらに環境面では、海面上昇や沿岸浸食によって将来的な土地喪失が懸念されており、気候変動対策が喫緊の課題として国際社会からの支援や協力が求められています。
文化的にはベンガル語を共通語とし、詩人ラビンドラナート・タゴールの影響を受けた文学・芸術が栄えています。音楽や舞踊、映像作品など多彩な文化活動が国内外で注目を浴びており、宗教はイスラム教が多数を占める一方でヒンドゥー教、仏教、キリスト教なども共存しています。祭礼や伝統行事、ベンガル料理(ビリヤニや魚のカレーなど)は観光資源としても人気を集めています。
教育分野では識字率向上や小中学校の就学率向上が進んでいる一方、地域格差や男女間の教育機会の不均衡が残ります。保健医療では妊産婦死亡率や乳幼児死亡率の低減が成果を見せるものの、地方部での医療設備や人材の不足が課題です。
総じて、バングラデシュは地理的に災害リスクが高いものの、強い経済成長と豊かな文化・歴史を有しています。今後は持続可能な都市開発や環境保全、社会インフラ整備、教育・保健医療のさらなる充実が、国のさらなる発展を左右する鍵となるでしょう。
〔特徴〕 1. 位置:南アジアのガンジス・ブラマプトラ川デルタ地帯に所在 2. 人口:約1億7000万人、世界で8番目に多い人口密度の高い国 3. 経済:衣料品輸出が主力産業、近年は年率6~8%の経済成長 4. 言語文化:ベンガル語を公用語とし、タゴールをはじめとする文学・芸術が盛ん 5. 環境・災害:毎年の洪水やサイクロン被害、気候変動による海面上昇リスク 6. 政治体制:議会制民主主義、多党制を採用、政党対立や選挙時の混乱も 7. 社会課題:電力・インフラ不足、都市部の住宅問題、教育・医療の地域格差
〔参考文献・ウェブサイト〕 1. 在バングラデシュ日本国大使館「在バングラデシュ日本国大使館」 https://www.bd.emb-japan.go.jp/itprtop_ja/index.html 2. 外務省「バングラデシュ基礎データ」 https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/bangladesh/data.html 3. ジェトロ「バングラデシュ:国・地域別投資環境」 https://www.jetro.go.jp/world/asia/bd/ 4. JICA「バングラデシュ活動概要」 https://www.jica.go.jp/bangladesh/index.html 5. ウィキペディア(日本語版)「バングラデシュ」 https://ja.wikipedia.org/wiki/バングラデシュ 6. World Bank「Bangladesh Overview」(日本語ページ) https://www.worldbank.org/ja/country/bangladesh
