以下では「イクサガミ」(戦神)という概念について、日本古来の神話・民間信仰における成り立ちや役割、現代における意義を中心に約500語以上で解説します。
―――――――――――――――――――― ■「イクサガミ」(戦神)とは何か ― 「イクサガミ」(戦神)とは、文字どおり「戦(いくさ)を司る神」を意味し、日本の古代から中世にかけて武士や朝廷、農民の間で広く信仰された神格です。一般に単独の固有名詞ではなく、武力や勇猛果敢さ、戦勝祈願の対象として崇拝される神々を総称する呼び名として用いられました。代表的な「イクサガミ」には、八幡神(応神天皇を神格化したもの)、武甕槌神(たけみかづちのかみ、香取神宮の主祭神)、以及び毘沙門天(仏教由来で戦勝守護神として信仰された)などが挙げられます。
古事記や日本書紀には、武具を携えた天津神(あまつかみ)が登場し、天孫降臨や国譲りの神話の中で活躍する場面が見られます。そこから派生して、地方豪族や武家が自らの戦勝を祈念する際に祭祀を行い、やがて全国各地に「〇〇八幡宮」「△△神社」「□□稲荷社」など、武神としての性格を帯びた社寺が誕生しました。特に源平合戦以降、武家社会が台頭すると、戦神信仰は武士階級のアイデンティティとも結びつき、神社建築、鎧兜の装飾、軍旗・旗印などに象徴が取り入れられます。
中世以降は、日常的に戦闘そのものが行われなくなった地域でも、厄除開運や五穀豊穣の神として戦神が祀られ続け、いわば「外敵から領地を守る神」としての役割に拡大しました。たとえば戦国時代の堀川天皇の命により行われた戦勝祈願には、国家的な祈祷儀礼の一環として戦神が動員されています。江戸時代になると、講や念仏といった民間信仰の形で「戦神祭」が行われることもあり、地域住民と社寺との結びつきが強まりました。
近代以降、軍国主義の高まりとともに戦神は軍艦や戦車などの軍事兵器にも命名され、「戦艦大和」「榛名」「武蔵」などが例として知られています。しかし戦後は平和憲法の下で過度な軍神崇拝が戒められ、戦勝祈願よりも「平和祈願」「産業振興」「文化継承」といった方向へと祭祀の主題が移行しました。現代の神社でも、武勇を象徴する甲冑(かっちゅう)や宝剣を展示しつつ、「いくさから国土を護る」という古層の意識を伝える場面が残っています。
―――――――――――――――――――― ■特徴(主な役割・性質) 1. 古代~中世の武家・豪族を中心とした戦勝祈願の対象 2. 八幡神・武甕槌神・毘沙門天など複数の神格が「戦神」として総称される 3. 鎧兜や軍旗への紋章使用、軍艦・兵器への命名など、武具・兵器文化と深い結びつき 4. 社寺での「戦神祭」や軍事祈祷が成立し、地域社会の結束を強める役割 5. 近代以降は「平和祈願」「産業振興」へ信仰対象の役割変容が見られる
―――――――――――――――――――― ■主な参考文献・ウェブサイト(日本語) 1. Wikipedia「戦神」 https://ja.wikipedia.org/wiki/戦神 2. Wikipedia「八幡神」 https://ja.wikipedia.org/wiki/八幡神 3. Wikipedia「武甕槌神」 https://ja.wikipedia.org/wiki/武甕槌神 4. Wikipedia「毘沙門天」 https://ja.wikipedia.org/wiki/毘沙門天 5. Wikipedia「日本書紀」 https://ja.wikipedia.org/wiki/日本書紀 6. 『神道辞典』(伊藤史朗 編著、東京堂出版、2020年) 7. 『日本の神と祭り』(柳田邦男 著、講談社学術文庫、2015年)
以上のとおり、「イクサガミ」は日本における戦神信仰の総称であり、古代から現代にかけて多様な形で社会文化に関与してきた重要な宗教概念です。
