VIX指数(VIXしすう)は、「恐怖指数」とも呼ばれる、米国シカゴ・オプション取引所(CBOE)が算出・公表している、市場の期待変動率(インプライド・ボラティリティ)を示す代表的な指標です。具体的には、S&P500指数オプションの価格から、今後30日間における株価変動の年率換算ボラティリティを逆算し、数値化したものです。VIX指数は市場参加者の心理を可視化する役割を果たし、数値が高まるほど市場の不安・混乱が強まっていることを示します。

VIX指数誕生の背景には、1990年代初頭の株式市場におけるボラティリティ管理の必要性があります。従来、価格変動を示す「ヒストリカル・ボラティリティ(過去の変動率)」は算出できても、市場参加者が将来にどの程度の変動を織り込んでいるかを測る指標は存在しませんでした。そこでCBOEは、オプション市場の需給から導かれるインプライド・ボラティリティを用い、投資家心理の逆指標としてVIXを提唱したのです。

VIX指数は一般的に数値が20前後を平常レンジとみなし、20を超えると「やや不安」、30を超えると「高い不安」、40を超えると「非常に高い不安」とされています。2008年のリーマン・ショック時には80超まで上昇し、歴史的な市場パニックを映し出しました。反対に、数値が10以下になると「異常なまでの落ち着き」を示し、理想的には逆張りの買いタイミングとされることもあります。

投資家はVIX指数をリスク管理や資産配分、ヘッジ戦略の指標として活用します。例えば、株式が大きく下落する局面ではVIXが急騰するため、VIX連動型ETFやVIX先物を買い建てることでポートフォリオの下落を相殺するヘッジが可能です。また、VIXの急落を利用して、後のボラティリティ上昇を狙った「ショート・スクイーズ」を仕掛ける投資戦略も存在します。

一方で、VIXを直接取引することはできず、先物やオプション、ETF/ETNを介してのみ投資可能です。また、短期的な値動きの激しさからタイミングを誤ると逆効果となるリスクもあるため、十分な知識と経験が求められます。加えて、インプライド・ボラティリティは需給バランスや市場構造の変化に影響されやすいため、VIX単体ではなく他の指標(HV、SVXYなど)と組み合わせることが推奨されます。

以上のように、VIX指数はマーケットの「恐怖」を可視化し、リスク管理や投機戦略において欠かせない指標です。しかし、その特性や限界を理解した上で慎重に活用することが重要です。

主な特徴(フィーチャー) 1. 米国S&P500オプションのインプライド・ボラティリティを算出 2. 市場参加者のリスク回避・恐怖心理を数値化 3. 30日先の変動率を年率換算で表示 4. 数値が高いほど相場の変動不安が増大 5. 先物・ETF・ETNを通じて間接的にトレード可能 6. 長期投資には向かず、短期ヘッジや投機向き 7. 数理モデルや需給変化に敏感であるため解釈に注意

参考文献・ウェブサイト 1. シカゴ・オプション取引所(CBOE)公式サイト https://www.cboe.com/vix 2. 日本経済新聞「VIX指数とは何か?」 https://www.nikkei.com/article/DGXZZO0000000Y0Y0A00C2EA2000/ 3. 投資情報サイト–Bloomberg Japan「VIX(ボラティリティ・インデックス)入門」 https://www.bloomberg.co.jp/volatility-index/vix/ 4. マネックス証券「ボラティリティ投資の基礎知識」 https://www.monex.co.jp/money/investment/volatility.html 5. 野村證券「市況解説:VIX指数と株式市場の関係」 https://www.nomura.co.jp/market/indices/vix/ 6. ウィキペディア(日本語版)「Chicago Board Options Exchange Volatility Index」 https://ja.wikipedia.org/wiki/Chicago_Board_Options_Exchange_Volatility_Index

投稿者 wlbhiro

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